ホットペッパービューティーアカデミー研究員 田中 公子氏が見る『アイビューティー業界』-第26回
【目元の“ついで提案”で売上UP!】
クロスセルがまつげサロンにもたらす意外な効果とは?
価格改定やメニュー見直しを考えるサロンが増えてきた今、「単価を上げていきたいけれど、ただ値上げするだけではお客様の負担が大きくなってしまうのが心配…」と感じている経営者の方も多いのではないでしょうか。
そんな中、注目されているのが“ついで提案”によるクロスセル。
たとえば、まつげパーマと一緒に眉スタイリングを提案することで、自然に単価が上がるだけでなく、お客様の満足度もアップするという好循環が生まれています。
限られた予約枠を有効活用できたりと、まつげサロンにとってもメリットの多い提案スタイル。
今回は、ホットペッパービューティーアカデミーの「美容センサス2024年上期」「美容センサス2022年下期」の調査をもとに、アイビューティーサロン向けにクロスセル活用のヒントをご紹介します!
文・作表:田中 公子(ホットペッパービューティーアカデミー研究員)
1. クロスセルとは?まつげサロンでの活用ポイント
2. 美容室でも高まる「まつげニーズ」
3. 美容室でクロスセル体験した男性が、まつげサロンへ来る可能性も?
4. 忙しいお客様ほど「まとめて目元ケア」したい
5. “いつものサロン”だからこそ受け入れやすい、安心感のあるクロスセル提案
1. クロスセルとは?まつげサロンでの活用ポイント
クロスセルとは、ひとつのメニューに加えて別のメニューを組み合わせて提案するスタイルのこと。まつげサロンでは「まつげパーマ+眉スタイリング」や「まつげエクステ+アイシャンプー」などの組み合わせがよく見られます。
単に売上アップを狙うのではなく、“お客様の目元全体の仕上がり”を意識した提案がポイント。お客様自身も気づいていないニーズを引き出すことで、満足度やリピート率の向上にもつながります。
2. 美容室でも高まる「まつげニーズ」
「美容センサス2024年上期<美容室・理容室編>」の調査結果からは、近年、美容室でも「髪の施術のついでにまつげメニューを受けたい」というニーズが高まっています。
実際に、美容室で“まつげメニュー”を利用したことがある20代女性は【18.6%】と高く、髪以外の目元ケアへの関心が確実に広がっていることがわかります。
※20代女性(1年以内の美容室利用者)が回答
出典:ホットペッパービューティーアカデミー「美容センサス2024年上期<美容室・理容室編>」
また、「まつげは美容室で済ませたい」と思っている方がいる一方で、まつげサロンに来てくださるお客様は、それ以上に“目元全体の完成度”を求めている可能性が高いとも言えるでしょう
まつげパーマやまつげエクステの施術中、お客様から「実は眉も気になってて…」「まつげの間に、ネイルしてもらおうかな」という会話になること、ありませんか?
「まつげ+α」の提案(「まつげ+眉毛」や「まつげ+ネイル」のセット提案)によって、より高い満足度と単価アップが期待できると考えます。
「眉も整えると、まつげのカールがより引き立ちますよ」などといった一言が、自然なクロスセルにつながります。
3. 美容室でクロスセル体験した男性が、まつげサロンへ来る可能性も?
最近では美容室でも「まつげメニュー」を利用する男性が増えています。「美容センサス2024年上期<美容室編・理容室編>」の調査からは、男性の“まつげ施術”経験は5.6%。さらに、ネイル(5.9%)やフェイシャル(7.6%)も含めた“+αメニュー”への関心が高まっていることがわかります。
※15~69歳男性(1年以内の美容室利用者)が回答
出典:ホットペッパービューティーアカデミー「美容センサス2024年上期<美容室・理容室編>」
背景には、「身だしなみとして清潔感を整えたい」という男性の意識の変化がありますが、とはいえいきなりまつげサロンに入るのはまだハードルが高いと感じている方も多いはず。
だからこそ、美容室での“クロスセル”体験が大きな入口になる可能性があります。
たとえば、いつも通っている美容室で「カットのついでに眉カット」や「ヘッドスパ+まつげパーマ」のような提案を受けたことで、「目元を整えると印象が変わるんだ」という気づきが生まれ、次は専門のまつげサロンでしっかりケアしてみようかなという行動につながるケースもあるでしょう。
まつげサロンとしても、そうした“目元ケアに一歩踏み出した男性”を受け入れる土壌を整えておくことが、今後の新規顧客獲得の鍵になりそうです。
4. 忙しいお客様ほど「まとめて目元ケア」したい
「一度の来店で効率よくケアしたい」というニーズは、今や多くの世代に広がっています。特に20代・30代女性では、ホットペッパービューティーアカデミーの「美容センサス2022年下期<美容意識・購買行動編>」からは、その割合が2割を超えているという結果もあります。
※15~59歳女性(1年以内の美容室利用者)が回答
出典:ホットペッパービューティーアカデミー「美容センサス2022年下期<美容意識・購買行動編>」
たとえば、「まつげパーマ+眉スタイリング」や「まつげエクステ+目元パック」など、短時間で受けられるセットメニューは“時短ケア”を求める方にとって魅力的な選択肢に。
施術の待ち時間や仕上げの間に追加できるメニューがあると、回転率と顧客満足度の両方をアップさせられそうです。
5. “いつものサロン”だからこそ受け入れやすい、安心感のあるクロスセル提案
サロンとの信頼関係があるからこそ、「まつげのついでに眉も」や「いつものメニューに少しだけプラス」といった提案も、自然に受け入れてもらいやすくなります。
お客様にとって“試してみる心理的ハードル”が低いのは、いつも通っているサロンだからこそ。まつげサロンならではの信頼感を活かしたクロスセル提案は、これからの定番スタイルになっていくはずです。
たとえば「まつげパーマのあと、少し眉の形を整えませんか?」など、いつもの施術にひとこと添えるだけで、気軽に始められる方は多いです。サロンとの信頼関係があるからこそ実現できる、安心感のあるクロスセル提案。まさにまつげサロンならではの強みです。
●データ出典:ホットペッパービューティーアカデミー
ホットペッパービューティーアカデミー「美容センサス2024年上期<美容室・理容室編>」
https://hba.beauty.hotpepper.jp/search/census/2024-1st-half/57951/
全国男女13,200人
ホットペッパービューティーアカデミー「美容センサス2022年下期<美容意識・購買行動編>」
https://hba.beauty.hotpepper.jp/search/census/2022-2nd-half/44066/
全国男女13,200人
田中 公子(たなか きみこ)
ホットペッパービューティーアカデミー研究員
前職は経営コンサルティングファームでIT業界の業務改善に携わる。リクルート入社後、ホットペッパービューティーの事業企画を経て、2012年から現職。
調査研究員として、「美容センサス」をはじめとした美容サロン利用調査や、美容消費の兆しを発信。
セミナー講演、業界誌・一般誌・テレビなど取材多数。(共著『美容師が知っておきたい50の数字』『美容師が知っておきたい54の真実』(女性モード社)ほか)