ホットペッパービューティーアカデミー研究員 田中 公子氏が見る『アイビューティー業界』-第25回
男女で異なるリピートの秘訣は?
女性は仕上がり、男性は情報と予約のしやすさを重視
アイビューティーサロンにおいて、お客様が「また行きたい!」と感じるか、それとも「もう行かない」と決めるかは、何によって決まるのでしょうか?ホットペッパービューティーアカデミー「顧客満足調査(MOT)2023」の調査結果をもとに、リピート・離脱の要因を分析し、男女による違いやアイビューティーに特有のポイントを探ります。
文・作表:田中 公子(ホットペッパービューティーアカデミー研究員)
1. リピート/離脱のポイントとは?(MOTサイクル)
2. 女性は施術を重視
3. 男性は情報重視
4. 【ジャンル比較】女性は、共通的に「仕上がり」「施術」を重視傾向
5. 【ジャンル比較】男性のリピートは、「情報重視」と「施術重視」に二極化
6. アイビューティーサロンがリピート率を向上するポイント
1. リピート/離脱のポイントとは?(MOTサイクル)
お客さまはサロンの「リピート」や「離脱(サロン離れ)」をどのタイミングで決めているのでしょうか?
ホットペッパービューティーアカデミーでは、お客さまが「リピート」や「離脱」を決める瞬間に着目したマーケティング手法「MOT(Moment of Truth)」を活用し、「美容サロンのMOTサイクル」を作成しています。アイビューティーサロンにおいては、サロン利用時におけるお客さまとの17の接点を分析し、どの段階でサロンの継続利用または離脱を判断しているのかを調査しています。リピート/離脱のポイントをランキングし、アイビューティー分野における傾向を探っていきましょう。
2. 女性は施術を重視
アイビューティーサロンにおける女性のリピートと離脱のポイントは共通しており、1位「施術」、2位「仕上がり確認」、3位「カウンセリング」という結果でした。
リピートのためには、施術と仕上がり確認が最も重要であり、期待通りの仕上がりが大きな決め手となります。一方で、施術や仕上がりが期待と異なると、離脱につながる傾向があります。特に、カウンセリングの段階で細かいヒアリングを行い、施術後の仕上がり確認を徹底することがリピーター確保のカギとなります。
3. 男性は情報重視
一方、男性のリピート・離脱のポイントもトップ3は共通していましたが、女性とは異なる傾向が見られます。
男性の場合は「サロン情報」や「口コミの充実度」がリピートの決め手になります。また、「予約のしやすさ」も影響し、スムーズに手続きができることが求められます。男性向けの施術事例や実際の利用者の口コミが充実することで、リピート率向上につながるでしょう。
4. 【ジャンル比較】女性は、共通的に「仕上がり」「施術」を重視傾向
「美容室」や「エステサロン」等、他の美容サロンのジャンルとも比較してみましょう。一覧化してリピート要因を見ると、「施術」「仕上がり確認」「カウンセリング」が、どのサロンでも女性のリピートに関わる重要な要素となっています。
離脱要因についても同様に、「施術」「仕上がり確認」「カウンセリング」が大きな割合を占めており、期待と実際のギャップが離脱につながることがわかります。
5. 【ジャンル比較】男性のリピートは、「情報重視」と「施術重視」に二極化
男性のリピート要因には、1位が「サロンを知る」となるジャンルと「施術」となるジャンルの2つのパターンがあることが分かりました。
「サロンを知る」が1位のジャンルは、ネイル、エステ(フェイシャル)、エステ(ボディ/痩身)、アイなど、男性の利用経験が比較的少ないジャンルが中心です。
一方で、「施術」が1位となったのは、美容室、エステ(脱毛)、リラクといった、男性の利用率が比較的高いジャンルです。
このことから、男性は利用経験の少ないサロンでは「まずは情報を集めたい」と考え、ある程度経験のあるサロンでは「施術の効果実感」を重視する傾向があるといえます。
また、男性の離脱要因を分析すると、「サロンを知る」がほぼ全てのジャンルで1位となっており、「口コミ」や「電話/サイトで予約」が2位、3位にランクインしていることが特徴です。
これは、男性が「情報不足」「口コミの信頼性不足」「予約のしづらさ」を感じた時点で、来店前から「もうリピートしない」と判断する傾向があることを示しています。特に、サロン利用の経験が少ない初心者ほど、この傾向が顕著であると考えられます
6. アイビューティーサロンがリピート率を向上するポイント
これらを踏まえ、アイビューティーサロンがリピート率を向上させるためには、以下のポイントが重要です。
女性の顧客に対して
施術のクオリティ向上 – 仕上がりの完成度を高め、満足度を向上させる。
カウンセリングの強化 – 事前のヒアリングを徹底し、施術後のギャップを減らす。
男性の顧客に対して
口コミ対応の充実 – 口コミへの迅速な対応や、顧客の声を活かしたサービス改善を行う。
予約の利便性向上 –ホットペッパービューティー等、ネット予約システムの導入検討や、ネット予約枠の開放(ネット予約ができるようにしておくこと)を実施。
これらの施策を講じることで、アイビューティーサロンのリピート率向上が期待できるでしょう。
●データ出典:ホットペッパービューティーアカデミー
ホットペッパービューティーアカデミー「顧客満足調査(MOT)2023」
https://hba.beauty.hotpepper.jp/search/cs/49900/
調査期間:
[女性]2023 年 7 月 5 日(水)~7 月 10 日(月)
[男性]2023 年 7 月 10 日(月)~7 月 13 日(木)
[スクリーニング調査](全国・20~59 歳)女性 6 万 4,000 人、男性 7 万人
[本調査]過去 1 年に美容サロンを利用/
美容サロンごとのリピート意向者※2 男女各 1,000 人づつ
美容サロンごとの離脱意向者※3男女各 300 人のべ 2,600 人づつ
※2リピート意向者…「また利用したいと思うお店があった」回答者
※3離脱意向者…利用したサロンで「いやな思い」をして、「お店を変えた」もしくは「変えようと思った」回答者
田中 公子(たなか きみこ)
ホットペッパービューティーアカデミー研究員
前職は経営コンサルティングファームでIT業界の業務改善に携わる。リクルート入社後、ホットペッパービューティーの事業企画を経て、2012年から現職。
調査研究員として、「美容センサス」をはじめとした美容サロン利用調査や、美容消費の兆しを発信。
セミナー講演、業界誌・一般誌・テレビなど取材多数。(共著『美容師が知っておきたい50の数字』『美容師が知っておきたい54の真実』(女性モード社)ほか)