ホットペッパービューティーアカデミー研究員 田中 公子氏が見る『アイビューティー業界』-第20回
円安が後押し!インバウンド需要拡大で注目される日本の美容サロン。魅力と受け入れ課題を徹底解説
2024年8月の訪日外国人旅行者数は293万人(JNTO発表)、同月過去最高値を更新し続けており、インバウンド需要が大きく高まっています。美容サロンにとってもインバウンドは大きなマーケットチャンスにつながる可能性があります。ホットペッパービューティーアカデミーが2024年9月に発表した「美容サロンにおけるインバウンド実態調査」より、外国人旅行者と美容サロンスタッフそれぞれの視点から、美容サロンのインバウンドの魅力と課題について解説します。
文・作表:田中 公子(ホットペッパービューティーアカデミー研究員)
1. 外国人旅行者の50.2%が日本の美容サロンを「利用したい」!
2. 日本の美容サロンが提供する「清潔感」が訪日旅行者を魅了
3. 外国人旅行者が日本の美容サロンに支払う金額は平均1万4,000円超
4. 「インバウンド対応したことがある」ネイルサロンは7割、アイビューティーサロンは5割超え!
5. 美容室の人気のメニューに「シャンプー&ブロー」!国ごとの慣習の違いが新たなチャンスに!?
6. サロンの認知経路は、インターネットの比重が高まる
7. 言葉の壁には、デジタルツール活用!
1. 外国人旅行者の50.2%が日本の美容サロンを「利用したい」!
2024年6月から7月に訪日した外国人旅行者に、無作為に日本の美容サロンの利用意向を聞きました。その結果、訪日外国人旅行者の50.2%が、日本の美容サロンを利用したいと回答しています。美容サロンは、訪日外国人旅行者の2人に1人以上のニーズがあるサービスなのです!
【サロンのジャンルは?】
「行ってみたい」と思う美容サロンをジャンル別にみると、「マッサージ・リラクゼーション施設」が1位となり、人気を集めています。「マッサージ・リラクゼーション施設」は、旅行中の疲れを癒したり、リフレッシュしたりといった期待が高そうですね。
2. 日本の美容サロンが提供する「清潔感」が訪日旅行者を魅了
日本の美容サロンの魅力を聞くと、1位には「清潔感・衛生的」がランクイン。技術力以上に外国人旅行者に安心感と信頼感を与える要因となっているのです!「清潔感・衛生的」というのは、日本人にとっては当たり前の基準ですが、海外では大きな魅力として捉えられています。
3. 外国人旅行者が日本の美容サロンに支払う金額は平均1万4,000円超
外国人旅行者が日本の美容サロンに1回あたり支払う金額の平均は1万4,033円でした。「1万〜2万円未満」や「2万〜5万円未満」の層も一定数存在し、高額支払い層が少なくないことが分かりました。
4. 「インバウンド対応したことがある」ネイルサロンは7割、アイビューティーサロンは5割超え!
美容サロンスタッフに実施したスクリーニング調査(一次調査)の結果では、「外国人旅行者の受け入れ経験がある」と回答したスタッフは全体の半数超えに。アイビューティーサロンのスタッフも52.6%が受け入れ経験があると回答しています。
さらに、インバウンドが進んでいると考えられるのはネイルサロン。ネイルサロンのスタッフは、7割以上が外国人旅行者の来店経験があるという結果に。コロナ禍前にも「痛ネイル」のSNS投稿など、日本のネイルは海外からの評価も高かったのですが、コロナ禍後も外国人旅行者の心を惹きつける魅力があるのでしょう。今後は、リピート来店や口コミを通じた新規顧客の獲得が期待されます。
5. 美容室の人気のメニューに「シャンプー&ブロー」!国ごとの慣習の違いが新たなチャンスに!?
ここからは、外国人旅行者を受け入れ経験のある美容サロンのスタッフに聞いた結果です。美容室での外国人旅行者に人気のメニューの2位に「シャンプー&ブロー」がランクイン!
シャンプー&ブローは、日本では単独で注文されることが少ないメニューですが、西欧では日常的なサービスとして定着しています。特に近年、訪日する西欧系旅行者が増加しているため、今後もこのメニューへのニーズが継続することが予想されます。
国ごとの慣習の違いによって、インバウンドにおける新たな提供価値が生まれるチャンスが広がっている点も注目すべきです。
6. サロンの認知経路は、インターネットの比重が高まる
外国人旅行者が美容サロンを訪れる際の経路は、「たまたま通りがかって来店」するケースが最も多い(40.5%)です。
一方で「インターネットでの検索」「美容サロンの予約サイトで検索」「SNSでの検索」など、Web上で探すケースも多いことが分かります。
外国人旅行者は、ハイトーンカラーなど希望するデザインの写真を持参することも多く、予約サイトやSNS等にアップしている写真のクオリティが高いことが、外国人旅行者の集客にも繋がる可能性があります。
7. 言葉の壁には、デジタルツール活用!
外国人旅行者を迎える美容サロンが直面している大きな課題には、言葉の壁があります。コミュニケーションの方法を調査すると、最も多かったのが「身振り手振り」(56.5%)ですが、2位には「スマホなどの翻訳機能を使用」(43.7%)がランクイン。4位にも「スマホで写真や画像を表示してイメージを共有」とスマホを使って対応していることが分かります。デジタルツールの活用は、今後の重要な対策となるでしょう。
●データ出典:ホットペッパービューティーアカデミー
「美容サロンにおけるインバウンド実態調査」
【訪日外国人旅行者調査】
調査期間:2024年6月~2024年7月
調査対象:上記期間に東京、大阪を訪れた外国人旅行者(936人)
【美容サロン従事者調査】
調査期間:2024年8月
調査対象:美容サロン(美容室、理容室、ネイルサロン、エステサロン、リラクゼーションサロン、アイビューティーサロン)で働いている人
<スクリーニング調査>2,632人
<本調査>外国人旅行客の来店を経験している1,016人
田中 公子(たなか きみこ)
ホットペッパービューティーアカデミー研究員
前職は経営コンサルティングファームでIT業界の業務改善に携わる。リクルート入社後、ホットペッパービューティーの事業企画を経て、2012年から現職。
調査研究員として、「美容センサス」をはじめとした美容サロン利用調査や、美容消費の兆しを発信。
セミナー講演、業界誌・一般誌・テレビなど取材多数。(共著『美容師が知っておきたい50の数字』『美容師が知っておきたい54の真実』(女性モード社)ほか)