アイリストも知っておきたい!グリオキシル酸使うヘアケアに急性腎障害リスク

 

髪質改善や酸熱トリートメントに含まれるストレートパーマ剤や、市販のヘアケア商品にも含有されることのある、グリオキシル酸による急性腎障害が報告され、『日経メディカル』電子版が2024年4月11日伝えた。
NEJM(The New England Journal of Medicine)誌の2024年3月20日号を引用して、医学ジャーナリストである大西淳子さんの記事を掲載している。

まつ毛やまゆげ商材に入っていることは、ほぼないと思われるが、アイリストや関係者も是非情報として持っていてほしい。

 

NEJM誌から
グリオキシル酸使うヘアケアに急性腎障害リスク

 

フランスHôpital de la ConceptionのThomas Robert氏らは、グリオキシル酸を用いた美容室での毛髪をストレートにする施術が原因で、急性腎障害を発症したと考えられる患者の治療を行い、NEJM誌2024年3月20日号にCorrespondenceとして症例報告した。リポートには、原因がグリオキシル酸であることを強く示唆する動物実験のデータも含まれている。

2023年1月にAm J Kidney Dis誌に報告された論文で、2019年から2022年までにイスラエルでグリオキシル酸誘導体を用いたストレート施術を受けた26人が、重症の急性腎障害を発症したと考えられる事例が報告された。腎生検では、多くの患者の尿細管内にシュウ酸カルシウムの沈着と尿細管の損傷が認められ、急性シュウ酸腎症と診断された。グリオキシル酸が経皮的に吸収され、代謝されて肝臓でシュウ酸となり、シュウ酸カルシウムが形成されたと考えられた。しかし、グリオキシル酸が経皮吸収されて急性腎障害を生じさせる可能性については、これまでほとんど検討されていなかった。

 著者らは、2020年6月、2021年4月、2022年7月の3回、いずれも同じヘアサロンでストレート施術を受けた後に急性腎障害を発症した26歳のチュニジア人女性の症例を経験した。それまで健康だった女性には、施術を受けたその日のうちに嘔吐、下痢、発熱、腰痛が生じたという。受診時に、血漿クレアチニン値の上昇が検出された。CT画像は閉塞性尿路疾患の所見を示さず、尿検査では蛋白尿や感染は否定的だったが、潜血陽性で白血球陽性だった。3回とも、受診後に腎機能は速やかに回復し、血漿クレアチニン値も低下していった。結晶尿または結石の検査は行わなかった。

患者は毎回、施術中に灼熱感があり、頭皮潰瘍が生じたと述べた。使用されたクリームには10%グリオキシル酸が含まれていたが、グリコール酸は含まれていなかった。

著者らはマウスの背中に、ストレート施術用クリームまたはコントロールとしてワセリンを塗布し、翌日に尿検査を行った。その結果、ストレート施術用クリームを塗布したマウスの尿中に、エチレングリコール中毒患者に見られると同様のシュウ酸カルシウム一水和物の細長い結晶が認められた。血漿クレアチニン値の有意な上昇も見られた。さらに3次元CT画像は、尿細管へのシュウ酸カルシウム一水和物の沈着を示した。コントロールマウスには、そうした変化は見られなかった。

これらの結果から著者らは、グリオキシル酸を含むストレート施術用クリームが急性腎障害を引き起こし得ることが示唆されたため、この成分を含む製品の使用は避けるべきで、市場からの回収を提案すると述べている。

なお、酸熱トリートメントと呼ばれるグリオキシル酸を用いた髪質改善は、主に美容室で行われているが、近年日本では自宅ケア用の製品も購入できるようになった。髪の歪みを緩和し、艶と手触りの良さをもたらすとうたわれている酸熱トリートメントの人気は高いため、わが国でも注意を要すると考えられる。

原題は「Kidney Injury and Hair-Straightening Products Containing Glyoxylic Acid」、概要はNEJM誌のウェブサイトで閲覧できる。