ホットペッパービューティーアカデミー研究員 田中 公子氏が見る『アイビューティー業界』-第13回
笑顔で帰るのに、なぜリピートしてくれない?
「不満を口にはできない」お客さまのホンネ
ホットペッパービューティーアカデミー 研究員の田中公子です。ホットペッパービューティーアカデミーでは、美容サロンの各ジャンルの調査を発表しています。今回は美容サロンを利用する女性のデータから「リピート率アップのヒント」について、解説します。
文・作表:田中 公子(ホットペッパービューティーアカデミー研究員)
1. 仕上がりがイメージと違う場合、はっきりと言えるのは2割未満
2. 不満を口にしてくれた人ほど、リピート率は高い!
3. 仕上がりに不満のあった人は、退店後に何をする?
4. 「仕上がりに納得がいかないことを連絡した」人のリピート率は8割近くに
5. 【20代】お客さまの「不満」の声は?
6. 【40代】お客さまの「不満」の声は?
7. 「この人にお任せしたい!」至極のカウンセリングテクニックは?
1. 仕上がりがイメージと違う場合、はっきりと言えるのは2割未満
「あのお客さま、そういえば来なくなったな?」そんなことを思われたことはないでしょうか?特に不満を言っていたかな…?確か笑顔で帰ってくれたはず…?もしかしてお客さまは「不満はあるけれど、言えないまま」退店していたかもしれません。
最初に、「仕上がりがイメージと違った場合、お客さまはどのような行動をするのか?」調査結果を見ていきましょう。
「仕上がりがイメージと違うことをはっきり伝えた」と回答した人は2割未満!8割以上の人が不満を口にできていないのです。「少し不満げな態度をしたが、言葉では言わなかった」は約1割。
6割以上の方は「その場では何も言わず、態度にも出さなかった」と回答していることから、満足して帰られたと思っていたお客さまが、実はそうではなかったかもしれないということが分かりました。
2. 不満を口にしてくれた人ほど、リピート率は高い!
では、先ほどの行動別に、サロンをその後リピートしたのかどうか?も見てみましょう。
実は「仕上がりがイメージと違うことをはっきりと伝えた」と回答した人のリピート率が最も高く7割を超える結果に!その場でしっかり認識の違いを解消できたことがリピートにつながったのではないでしょうか。
3.仕上がりに不満のあった人は、退店後に何をする?
仕上がりがイメージと違ったときの「退店後」の行動も見てみましょう。「別の美容サロンに行き、施術を受けなおした」が1割強、次いで「市販剤などで、自分がなんとかしようとした」がほぼ同じスコアで続きます。
一方「改めて仕上がりに納得がいかないことについて連絡した」という方は1割未満、「口コミ・レビューサイトに評価を書きこんだ」人もごくわずかです。ほとんどのケースにおいて、施術をしたサロンでは何も言わずに自身で対処、もしくは行動を起こさない傾向のようです。
4. 「仕上がりに納得がいかないことを連絡した」人のリピート率は8割近くに
退店後の行動別に、サロンのリピート状況を見てみましょう。「改めて仕上がりに納得がいかないことについて連絡をした」人のリピートは8割近くに!不満をきちんと伝えてくれた方がリピート率も高いという結果になりました。
一方で、リピート率が低いのは「別の美容サロンに行き、施術を受けなおした」人。お直しをしてくれたサロンに、リピートしたいと感じてしまったのかもしれません。
5. 【20代】お客さまの「不満」の声は?
このように、サロン滞在中・退店後ともに「不満を口にしてくれた人」ほど、リピートすることがデータから分かります。
サロンとしては、お客さまは何が不満だったのか知りたいはず!にもかかわらず、なぜお客さまは「何も言えない」のでしょうか?「サロンで困った経験」の自由回答を見ていきましょう。まずは、Z世代・ミレニアム世代である20代です。
●空気を読みすぎる・遠慮する傾向
「もう少し切ってほしかったが、ものすごく人が待っていたのと忙しそうなので言えなかった」(自由回答抜粋)
「カウンセリング中に、デザインや色を決めるのに時間をかけるのがスタッフさんに申し訳ない」(自由回答抜粋)
●プロに意見しづらい
「(仕上がり確認で)バランスが良くないように見えたが、プロの方だし、こういうものなのかなと思って言えなかった」(自由回答抜粋)
まず20代は「空気を読みすぎる・遠慮する」という傾向が見られます。「時間がかかってもいいですよ」「なんでも言ってくださいね」など、気軽に相談できる雰囲気をつくることが大事ですね。
6. 【40代】お客さまの「不満」の声は?
次に40代のオトナ女性の回答を見てみましょう。
40代女性:「サロンで困った経験」(自由回答)
●こだわりがない・希望がない
「具体的にどうしたいというものがないと、やはり仕上がりはいまいちだった」(自由回答抜粋)
「希望を伝えなかったら施術前と変わり映えがしない髪型になった」(自由回答抜粋)
●プロに意見しづらい
「美容師の人が自信たっぷりに「いいでしょ?」と言うので、なんか違うと思っていたけれど、そうですねと言うしかなかった」(自由回答抜粋)
40代では、こだわりがないゆえに(明確にニーズを伝えていないために)仕上がりのイメージに差分を感じている、という回答や何かが違うと思っても言いづらくなってしまうという声も。また20代同様に、プロには意見しづらいという回答もありました。20代も40代もカウンセリングの段階からしっかりニーズを引き出す必要がありそうです。
7. 「この人にお任せしたい!」至極のカウンセリングテクニックは?
出典:ホットペッパービューティーアカデミー動画「上級カウンセリングテクニック~アイサロン編~」
ではお客さまのニーズを引き出すにはどのようなカウンセリングが必要なのでしょうか?ホットペッパービューティーアカデミーの「上級カウンセリングテクニック~アイサロン編~」では、「EyelashSalon Angela」の伊東真紀さんが特別講師となり、実践可能なノウハウをお伝えしています!
サロンのリピート率は90%以上、アイラッシュソムリエ資格も保有する伊東さん。
「施術中にあまり会話をしない」アイサロンですが、どんなポイントを確認しているのか?実際の施術場面でのロープレも収録していますので、ぜひご確認ください!
出典:ホットペッパービューティーアカデミー動画「上級カウンセリングテクニック~アイサロン編~」
●データ出典:ホットペッパービューティーアカデミー
「世代別の美容消費・価値観に関する調査」( 2022年2月)
調査対象:全国の 美容サロン(ヘアサロン・ネイルサロン・アイサロン・リラクゼーションサロン・エステサロンのいずれかを1年以内に利用している)20~59 歳の女性1,656人
田中 公子(たなか きみこ)
ホットペッパービューティーアカデミー研究員
前職は経営コンサルティングファームでIT業界の業務改善に携わる。リクルート入社後、ホットペッパービューティーの事業企画を経て、2012年から現職。
調査研究員として、「美容センサス」をはじめとした美容サロン利用調査や、美容消費の兆しを発信。
セミナー講演、業界誌・一般誌・テレビなど取材多数。(共著『美容師が知っておきたい50の数字』『美容師が知っておきたい54の真実』(女性モード社)ほか)