【連載】ホットペッパービューティーアカデミー 研究員田中 公子氏が見る『アイビューティー業界』
アイサロン利用者に聞いた!サロンの価格改定のリアル
値上げで、顧客離れは起きるのか?
ホットペッパービューティーアカデミー 研究員の田中公子です。ホットペッパービューティーアカデミーでは、美容サロンの各ジャンル調査を発表しています。今回は2023年3月に発表した「美容サロンの価格改定に関する調査」からアイサロンのお客さま調査の結果をご紹介!値上げの波は例外なくサロンにも!値上げによってサロンの消費は変わるのでしょうか?「値上げにも強いサロン」の秘訣は?さっそくデータを見ていきましょう。
文・作表:田中 公子(ホットペッパービューティーアカデミー研究員)
1. アイサロンの値上げ/価格改定の実態は?
2. 利用料金の増加は、500~1,000円未満が最多
3. 値上げの実施はいつから?
4. 値上げに納得は6割超え!
5. 値上げ=サロン離れなのか?
6. そもそもの満足度が低いと、値上げをきっかけに離反する?
7. 値上げがあってもサロンに通いたくなる魅力は??
1. アイサロンの値上げ/価格改定の実態は?
アイサロン半年以内利用者のお客さま、男女267人に「直近利用したアイサロンで料金の値上げ/価格改定はありましたか?」と聞いたところ、33.3%が「値上げがあった」、10.9%が「今後予定されている」と回答。「値上げあり・計」は44.2%となりました。「値上げはない」の29.6%を大きく上回る結果に。
他のジャンルの結果も見ると、ヘアサロンでは「値上げあり・計」は38.0%。一方、エステでは52.8%、ネイルでは54.7%でした。エステでは店販比率が他のジャンルと比べて高く、ネイルではチップやジェルなど、商材の値上がりの影響が大きいのかもしれません。同じ美容サロンでも、値上げの実施状況はジャンルのビジネスモデルなどによって異なるようです。
2. 利用料金の増加は、500~1,000円未満が最多
「値上げによって、あなたの利用料金はどのくらい増えましたか/増えそうですか?」は、500~1,000円未満が33.9%と最も高く、「500円未満」が30.5%と続きます。ヘアやネイル、エステも、500~1,000円未満の利用金額増が最多でした。
3. 値上げの実施はいつから?
※2023 年 2 月には予定が含まれ、2023 年 3 月以降は予定
「2022年4月~2023年4月の間で、値上げはいつからありましたか/ありますか?」に対しては、アイサロンで最も多かったのは「2023年1月」です。ヘアでは2022年10月、エステでは2022年6-7月からの値上げが最多でした。2022年6月には電力料金の値上げ、2022年10月には飲食料品の値上げなどがニュースになりました。社会の値上げの波にあわせるサロンも多かったのではないでしょうか。
4. 値上げに納得は6割超え!
「値上げがあった」、「今後予定されている」回答者に対して、「あなたはその値上げに納得していますか?」を聞いたところ、6割超が「納得している」「どちらかといえば納得している」を回答。「納得していない」「どちらかといえば納得していない」を大きく上回る結果になりました。
お客さまご自身もさまざまな日常生活品の物価高を感じられているため、サロンの値上げにも理解を示しているのではないでしょうか。サロンでは「価格」を上げることが顧客離れにつながるのでは?と躊躇するケースもあると伺いますが、質の高いサービスをお客さまに提供するために「必要な値上げ」の実施は多くのお客さまは理解を示しているのではないでしょうか。
5. 値上げ=サロン離れなのか?
「値上げによってサロンを変えたいと思いますか?」という質問に対しては「変えるつもりがない」が半数に達し、「変えるつもりだ」を大きく上回る結果に。「値上げに納得している」お客さまが多いことも背景にあるでしょう。
6. そもそも満足度が低いと、値上げをきっかけに離反する?
ここでサロンの「値上げ以外」の満足度を調べてみました。そして、満足度別に先ほどの「サロンの変更意向」を集計してみた結果がこちらです。
サロンに対してそもそもの満足度が高い人ほど「(いま通っているサロンを)変えるつもりはない」が高く、「やや不満がある・不満がある」と答えた人ほど、「変えるつもりだ」のシェアが高いのです。
あくまで値上げは「きっかけ」。値上げが原因でサロンを変えるのではなく、もともとの満足度の低さが原因で、サロンを変えてしまうということではないでしょうか。
「値上げをしたらお客さまが離れてしまう」とご心配のサロンさんもいらっしゃると思いますが、顧客満足度が高ければ値上げをしてもお客さまの離脱を防げるのではないかと考えます。
7. 値上げがあってもサロンに通いたくなる魅力は??
最後に「あなたの通うサロンに値上げがあっても、どんな点があれば、通いたくなりますか?」を聞くと、1位は「技術力の高さ」、2位は「接客の丁寧さ」、3位は「スタッフの人柄」がランクインしました。
美容サロンは、定期的に対面接点を持つ場であり、サロンという空間で美容師とも距離の近い時間を過ごすことになります。このため、利用者は「価格」だけでサロンを判断しているわけではなく、「技術力」や、技術以外の「接客」などに対しても重視しています。
値上げの背景や、サロンの「強み」をしっかりとお客さまに伝えることで、値上げによる顧客離れは一定程度抑制できるのかもしれません。
●データ出典:ホットペッパービューティーアカデミー
「美容サロン価格改定 に関する調査」(2023年3月)
調査対象:直近半年以内に美容サロン (ヘアサロン、エステサロン、ネイルサロン、リラクゼーションサロン、アイビューティーサロン)のいずれかを利用した全国の 20~49 歳男女 3,000 人(女性 1,500 人、男性 1,500 人)を回収(1 次調査)。本寄稿はそのうち、アイビューティーサロン利用者 267 人(女性 194 人、男性 73 人)を抽出し、集計した結果
田中 公子(たなか きみこ)
ホットペッパービューティーアカデミー研究員
前職は経営コンサルティングファームでIT業界の業務改善に携わる。リクルート入社後、ホットペッパービューティーの事業企画を経て、2012年から現職。
調査研究員として、「美容センサス」をはじめとした美容サロン利用調査や、美容消費の兆しを発信。
セミナー講演、業界誌・一般誌・テレビなど取材多数。(共著『美容師が知っておきたい50の数字』『美容師が知っておきたい54の真実』(女性モード社)ほか)