経営者及びアイリストは要認識!「まつ毛用パーマ剤」に関する歴史と規制

頭髪用に製造承認されたパーマネント・ウエーブ剤を「まつ毛パーマ」に使用すれば薬事法に基づく目的外使用に当たる

現在、アイビューティにおける主役的存在といえる、いわゆる「まつ毛パーマ」は、日本において1980年頃から行われていたと思われる。まつ毛にカールを付けて持ち上げるという技法は、目を美しく魅力的に演出したため、おしゃれな女性に支持され、サービスメニューとして定着した。

当時、まつ毛パーマは、美容室やエステティックサロンで盛んにおこなわれており、美容師資格も必要とされていなかった。そのまつ毛パーマで使用されていた薬剤は、頭髪用のパーマ剤として使用されるものと同じものであった。
まつ毛パーマでは、頭髪用のパーマ剤と同じものが使用されていたため、薬剤が目に入ったり、まつ毛を縮れさせてしまったりするトラブルが起きていた。そのことが社会問題化して広がったため、1985年厚生省生活衛生局指導課課長通知が出された。

以下、現在の状況に至るまでの主な経緯をまとめて紹介する。

 

1985年・昭和60年7月1日(衛指第117号)
厚生省生活衛生局指導課課長
「パーマネント・ウエーブ剤の目的外使用について」通達

各都道府県・各政令市・各特別区衛生主管部(局)長あて

【通達内容】
最近、マツ毛パーマと称して医薬部外品であるパーマネント・ウエーブ用剤を使用し、マツ毛に施術を行う技法が現われ、流行の兆しを見せているが、この施術を行う個所が目に非常に近いところからパーマネント・ウエーブ用剤が容易に目に入る可能性があり、薬剤の成分による視力障害等の被害が懸念されるところである。また、医薬部外品であるパーマネント・ウエーブ用剤は頭髪にウエーブをもたせ、保つために使用する目的で製造承認がなされているものであり、かかる施術に使用することは、薬事法に基づく承認内容を逸脱した目的外使用となる。

医薬部外品であるパーマネント・ウエーブ用剤は、その定められた方法に従い、正しく使用されてはじめて、その安全、有効な効果が期待できるものである。しかるに、これを美容師が顧客に対し目的外使用し、その結果として何らかの事故を生ぜしめるなどは美容師の社会的責務 に背くものであり、厳に慎まねばならないものである。 貴職におかれては、管下の美容所等においてかかる行為により事故等の起ることのないよう、美容所等への立入検査、巡回指導を行い営業者等を十分に指導する等により美容所における美容業務の適正な実施の確保を図られたい。

なお、本通知については、当省薬務局と打合せ済みであるので念のため申し添える。

【解説】
1985年に出されたこの通知が、日本における「まつ毛パーマ剤」における初めての規制である。このことによって、「まつ毛パーマ」では、医薬部外品として製造認証されたパーマネント・ウエーブ用剤を使用したら、薬事法に基づく目的外使用にあたる。という見解が出された。
指導課長の通知は、あくまで見解であり法律ではない。しかし、パーマネント・ウエーブ剤の目的外使用で裁判になった場合、この通知が証拠として採用されるので、法律と同じ効力があるとされる。

 

2004年(平成16年)9月3日
国民生活センターが「まつ毛パーマ」に関する相談事例を発表

【解説】
独立行政法人 国民生活センターは、平成16年9月3日、まつ毛パーマによる目の炎症やまぶたが腫れたという危害情報が寄せられていることから、その情報を調査分析し、実際に使用されている「まつ毛パーマ液」を中心に問題点をまとめ、関係機関に要望を行った。
この報告では、まつ毛パーマの解説、主にエステティックサロンと美容院で行われている事、危害の件数とその事例、まつ毛パーマに用いられるパーマ液に関するテストとその結果、消費者へのアドバイス、関係行政と関連事業団体への要望・情報提供がなされた。
この国民生活センターの発表を受けて、厚生労働省健康局生活衛生課長が、改めて次のような通達を行った。

 

2004年・平成16年9月8日(健衛発第0908001号)
厚生労働省健康局生活衛生課長
改めて「パーマネント・ウエーブ剤の目的外使用について」通達

各都道府県・政令市・特別区衛生主管部(局)長あて

【通達内容】
標記については、 「パーマネント・ウエーブ用剤の目的外使用について」 (昭和6 0 年7月1日付衛指第1 1 7号生活衛生局指導課長通知) (以下「本職通知」という) により、美容所等においていわゆるまつ毛パーマと称する施術(以下「まつ毛パーマ」という)により事故等の起こることのないよう、貴職に対し美容業務の適正な実施の確保をお願いしているところである。

今般、独立行政法人国民生活センターの実施したまつ毛パーマに関する調査に基づき、エステサロン、美容所等において、まぶたや目に対する健康被害の発生が見られ、 同センターより行政に対し、パーマネント・ウエーブ用剤がまつ毛に使用されることのないよう、周知及び指導の徹底が要望されたところである。貴職におかれては、管下のエステサロン、美容所等において、かかる行為により事故等の起こることのないよう営業者等に対し周知徹底を図るとともに、再度、本職通知の趣旨に基づき、美容業務の適正な実施の確保を図られるよう、特吸の御配慮をお願いする。なお、本通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項の規定に基づく技術的助言として通知するものであり、当省医薬食品局と予め打合せ済みであるので念のため申し添える。

 

「まつ毛パーマ剤」に関する通達は2回だけ   美容師免許の必要性には触れられていない

「まつ毛パーマ剤」に関しては、1985年・昭和60年に出された「パーマネント・ウエーブ剤の目的外使用について」が最初で、次に出されたのは、国民生活センターの発表を受け、同じ内容の通達を、2004年・平成16年9月8日付で改めて出された2回だけである。

このことから、「まつ毛パーマ」において、医薬部外品であるパーマネント・ウエーブ剤を使用してパーマをかける行為は、用材が容易に目に入る可能性があり、薬液の成分による視力障害等の被害が懸念される。
パーマネント・ウエーブ剤は、「頭髪用」に製造承認がなされているものであり、これを「まつ毛パーマ」に使用するのは薬事法に基づく目的外使用に当たる。という厚生労働省健康局生活衛生課課長の見解が、現在の規制となっている。